分離技術 研究所

研究所の設立目的

磁石を用いた除鉄装置は大量の粉体や粒状体の生産ラインに適しており、磁性粒子の大きさに関わらずこれを吸着することができる。しかし、これまでの試験経験から、磁石で吸着できる磁性粒子でも全ての除去まで至っておらず、その除去性能は粉体の流動性や粉体の嵩密度などの条件に左右され、供給方法によっても除去性能が異なってくることが判っている。さらに、従来の除鉄装置では、微小磁性粒子を除去することはできておらず、おそらく、微小磁性粒子の除去性能が低い要因として粉体粒子との結合やその流動性が大きく関係していると考えられる。しかし、除鉄装置の除去性能に与えるこれらの要因の影響について調査した研究はわずかであり、その殆どの設計は高磁束密度(高磁力)優先で設計者の個人的な経験に基づいて実施されている。このため、本研究所では、従来の除去手法を検証すると共に、粉体に含有した磁性粒子の評価と粉体粒子に係る流動性・密度・付着力などの粉体特性を整理し、除去性能を左右する要素を試験によって明らかにする。そうして、各粉体に対して装置の適正な構造や設置~管理手法を提案するものである。(キーワード:SUS304摩耗粒子と加工誘起マルテンサイト変態、粉体の安息角とせん断付着力、粉体の流動性と閉塞)

所長: 博士(工学)大西賢治

除鉄装置における棒磁石構造がシリカ粉体中の
磁性粒子除去率に及ぼす影響

論文掲載雑誌
Modern Physics Letters B;Vol.36, Page 2242032 (2022)
Powder Technology;Vol.430, Page 119027 (2023)
Kenji Onishi a ,Daisuke Yonekura b
aDaika Tech Co.,LTD.
bDepartment of Mechanical Science,Tokushima University

本研究は、粉体中から磁性摩耗分を取り除く棒磁石を使用した除鉄装置の設計指針を確立すべく、半導体回路の封止材として用いられるシリカ粉体を対象に、磁性粒子の除去率に及ぼすシリカ粒子の流動性、磁束密度、磁極数、棒磁石の傾斜角度及び棒磁石の断面形状の影響を明らかにすることを目的としたものである。

1.棒磁石の構造とその機能・特長

棒磁石の特長

高磁束密度

一般的な認識は,除去性能の向上に寄与

磁束密度の大きさ

磁極間の磁石体積に依存する

高磁束密度化

同径の棒磁石では磁極数の減少

磁極数

磁性粒子を捕捉する箇所数

2.磁極数と粉体の流動性

除去性能におよぼす棒磁石の磁束密度の大きさと磁極数の影響及び粉体の流動性の影響については、類似摩耗粉を使用した除鉄試験による検討の結果、粉体の流動性は安息角だけでは評価が困難であり、安息角による評価に加えて一面せん断試験によるせん断付着力による評価が適していることを明らかにした、また、流動性が高い粉体ほど除去性能が高くなること、及び磁束密度を増加させるよりも磁極数の増加の方が除去性能の向上に効果的であることを明らかにした。

3.棒磁石の傾斜角度の影響

除去性能におよぼす棒磁石の傾斜角度の影響については、棒磁石上への粉体の堆積、移動、滑落挙動の違いから、棒磁石を水平設置した場合よりも傾斜角度を持たせた方が除去性能に優れること、その適正な傾斜角度が粉体の安息角付近にあることを明らかにした。

4. 棒磁石の断面形状の影響

除去性能におよぼす棒磁石の断面形状の形状については、雫型断面形状を模した棒磁石は粉体の堆積・架橋による閉塞トラブル対策としては有効であるが、除去性能の点では、従来の円形断面形状の棒磁石の方が優れていることを明らかにした。

5. 捕捉される磁性粒子の径と磁束密度の関係

また、磁束密度の異なる単一磁極磁石棒を用いた試験を行い、補足される粒子径と磁束密度の関係についても検討を行い、高い磁束密度の棒磁石は50μm未満の磁性粒子の補足に対して有効であり、小粒径磁性粒子の除去については、高い磁束密度が必須であることを明らかした。

6.磁性材料の磁性の違い

【Dセンサー】 Fig.1
  • 磁石に吸着した磁性の大きさ(量)を把握するための警報装置
  • 磁性材料の吸着力がモータ回転時の負荷として電流値を変化させる
  • 磁性の大きさ SS400 ≒ 4×SUS304

7.棒磁石の規格

現在、ご用意出来る棒磁石の規格
①多極(磁極数を優先した棒磁石)    Φ25(公称1.2テスラ)
②高磁力(磁束密度を優先した棒磁石)  Φ25(公称1.7テスラ)

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